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『赤の勇者の物語』 プロローグ1

ディラート
ディラートが好きで、ディラートがミアンデルアを助け出すまでの物語をできる限り公式設定に沿って書いてみたい!と思い立って書き始めていたオリジナル小説です。
カサンドラやイベール、エスリアとノゼなど絡んでいく話です。
まだ少しだけで全然進んでなく拙い文章ですが、良ければご一読を^-^
アルテSNSにアップしたものをこちらでも掲載していきます

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『赤の勇者の物語』

 神々によって創られたといわれるラヴァート世界も人々の争いが無くなることはなかった。
月公国と隣国バルテメイト王国との戦争に、大国である太陽王国が参戦したことによって、戦況は悪化の一途を辿っている。噂では人ならざる物までが戦争の道具として使われているという。
また原因不明の奇病「獣化病」がラヴァート全土に広がってきており、化け物と化したものが人を襲うという事件が各地で起こっている。戦地から遠く離れた地でも人々は不安な日々を送っていた。

~プロローグ 1

 海神ヴォンドラームが治める大海に近い山地、グランドサーフェスの山奥に、俗世から隠れるように佇む小さな村がある。狩りを主な生業としており、極まれに狩りの途中で魔法の源となる輝晶石を採取し、その輝晶石を使って武器や魔導具を作るのも重要な収入源としていた。特にグランドサーフェスで採れる輝晶石は純度が高く魔力を蓄え易いので結構な額で取り引きされている。
 そんな小さな村の入り口に、一人の女が佇んでいた。白い肌に緩やかにウェーブした藍色の髪。全体的に黒を基調とした服装で外套の上からも女性的なラインが判る。妖艶ながら鋭さを持った紅い瞳の美しい顔も、しかし、今は呆然としていた。
「これは・・・ いったい何があったんだ・・・」
 簡素ながらも美しい街並みだったリーンの村は、焼け野原と化していた。家屋のほとんどは焼け落ちて、そこかしこに住民たちの遺体が転がり、まるで地獄絵図のようだ。
 女は暫し呆然としていたが、ハッと我に返り、焼け落ちた家の中や、遺体を確認していく。まだ煙が上がっている所もあるので、恐らく襲撃されてからまだそんなに時間は経っていないだろう。もしかしたら生存者がいるかもしれない。それに自分は探し出さなければならない。命を賭して戦って散った親友ローザから託された者を。
 1時間ほど探したが生存者は見付からなかった。そして探していた者も。顔見知りだった者たちの死を確認して廻るのは辛い作業だった。同族のよしみで良くしてくれた気さくな村人たちの笑顔が眼に浮かんでくる。
いたたまれなくなって村を出ようとしたとき、微かな呻き声が聞こえた気がした。
「どこだ!」
 女は大声で叫ぶと、近くの焼け跡で何かが倒れる音がした。慌てて駆け寄ると、落ちた屋根の木材が僅かに動いている。
「ここか! 待っていろ! 今どかしてやる」
 女はそう言って、まだ燻っている木材を慎重にどかしていく。
「! エトヴァじゃないか! おい、無事か?!」
 エトヴァは村で武具屋をやっていた男だ。そして何よりエトヴァはローザの父親だった。
 女の声にエトヴァは呻きながら薄っすらと目を向けてきた。
「うぅ・・・ あ・・・ あぁ、フ、フランシスか・・・ ひさし、ぶりだな・・・」
「何を暢気な! すぐ手当てをしてやるからな! ・・・!!」
 女、フランシスは、エトヴァに覆い被さっていた大きな板を持ち上げて息を呑んだ。エトヴァの下半身は倒れた太い柱に潰されていた。これではもう助からない。さすがに見るに耐えず、持ち上げた板をそっと元に戻すと、フランシスはエトヴァの傍らに膝を突いた。
「慰めは言わない。もう長くは保たないだろう・・・」
 悲痛な顔のフランシスに、エトヴァは無理やり笑みを浮かべる。
「ああ、わかって、いるさ・・・ 気に、するな」
「・・・何があった?」
「あ、あっと、いう間だった・・・ ガルディ、なんとか、と、いうやつが・・・軍隊、を連れてやってきて・・・」
「ガルディ? ・・・もしや、ガルディレアのことか?」
「ああ、そうだ。た、たしか、そう言っていた・・・」
 今の戦争に加担して『深遠の策士』と呼ばれているガルディレア。何か怪しげな研究をしていると噂があり、その研究のためには手段を選ばないとも聞いている。そして、何よりガルディレアは憎むべき仇だった。しかし、こんな山奥の村に何故?
「何故、奴がこの村に?」
「お、おそらく、先月、ロ、ローザが持ち帰った、大型の、高純度の輝晶石が、目当てだった、んだろう・・・ ゴホッゴホッ! ゴボッ!」
 咳き込んだエトヴァが血を吐いた。フランシスは慌ててエトヴァの顔を横に向けてやる。吐いた血で窒息しないようにするためだ。
「わかった! もう喋るな!」
 何か血を拭ってやるものはないかと、立ち上がろうとしたフランシスの腕をエトヴァが掴んで引き止める。
「フ、フランシス、た、頼みが、ある! ゴホッ! む、娘を! 娘を頼む! ゴホッゴボッ!」
 再び血を吐いたエトヴァの瞳から徐々に光りが消えていく。フランシスはエトヴァの意識を繋ぎ止めようと大声で話しかける。
「娘?! 生きているのか?! どこにいるんだ?!」
 エトヴァの口が微かに動いているのを見て、フランシスはエトヴァに口元に耳を寄せた。
「お、俺の、身体の、下に、隠し、扉が、あ、る・・・そ、こ、から・・・・ ・・・」
 エトヴァの瞳から光りが消えた。フランシスは虚空を見詰めているエトヴァの目蓋を閉じてやり、短く冥福を祈った。そして、すぐに立ち上がるとエトヴァを潰していた柱を退かしに掛かる。その娘が生きている確証はないが、急いだ方がいいだろう。またガルディレアが戻ってくるとも限らないのだから。フランシスの中に激しい怒りが込み上げてきた。奴のおかげで失った命がどれほど多いか。そうして憎々しげに呟く。
「・・・復讐の理由が1つ増えたな。ガルディレア」
 苦労して柱とエトヴァの遺体を退かして、血に染まったカーペットを引き剥がしてみると、果たして隠し扉があった。自分の知る限り、エトヴァは倒れてくる柱を避けられないほど鈍重ではなかったはずだ。恐らくこれを守るために身を挺したのだろう。
 警戒しつつ扉を開けてみると、すぐ下に梯子が掛かっている。フランシスは一瞬躊躇したが、素早く梯子を降りていった。彼が守っていたのだ、敵がいることはまずないだろう。梯子を降りると、身を屈めなければ通れない横穴があり、その先に微かに明かりが見えている。フランシスは足音を立てないように慎重に進んでいった。
 突き当たりは様々な武器が置かれている武器庫になっていた。恐らくは店に出す武器の在庫を保管してあるのだろう。フランシスはすぐには入らずに、通路から様子を伺う。明かりが点けられているので、中の様子は概ね見て取れるが人影は見えない。しかし、人がいる気配ははっきりと感じられる。しかも僅かに殺気も発せられているのだ。これでは隠れている意味がないが、まだ気配を隠す術を知らない子供なら仕方ないことだろう。フランシスは苦笑しながら、中に向かって声を掛けた。
「娘。いるのだろう? お前の父親、エトヴァに頼まれて助けにきたぞ」
 暫し待ったが返事はない。そのことにフランシスは細く笑んだ。上等だ。このくらいでノコノコ顔を出すようでは、この先長くは生きていけないだろう。それに小さいながらも発せられている殺気も気になる。どのくらいの覚悟があるのか、試してみたくなった。
 フランシスはゆっくりと倉庫に踏み込んだ。気配から娘が隠れているだろう場所は判っている。果たして、まさにその場所から、小さな少女が飛び出してきた。不釣合いな長剣を腰だめにして突っ込んでくる。
「おっと」
 フランシスは身を捻るだけで難なく避ける。すると少女は剣の重さに引き摺られて、そのまま前のめりに転がった。それでも少女は、慌てて起き上がると向き直って眼前に剣を構えようとする。しかし、元より小さな子供に扱えるような剣ではない。先ほどの攻撃も突っ込む勢いを借りて一撃必中を狙ったのだろうが、それをかわされてはもう力も残っていないだろう。必死に構えようとするが切っ先が持ち上がらない。
半泣きになりながらも勝気に睨み返してきた目が、相手が女性であることが判って驚きに見開かれる。
「あ・・・」
 小さな声を上げた少女の手から剣が抜け落ちて、倉庫に大きな金属音が響く。そして少女はへなへなとその場にへたり込んだ。
フランシスは少女の前にしゃがんで目線を合わせると、安心させるように微笑んだ。
「怪我はないか?」
 フランシスの問いに、少女はこくりと頷く。幼いながらも美しい顔立ちの褐色の頬に真っ直ぐな黒髪が流れ落ちる。
「お前が、カサンドラだな?」
「・・・え?」
 カサンドラと呼ばれた少女が驚いて顔を上げた。
「どうして。名前を・・・」
「ローザから話は聞いている。歳の離れた妹がいると」
「ローザお姉ちゃん!? お姉ちゃんのお友達なの?」
「ああ・・・ 私はフランシスという。よろしくな」
「はい! あ。お姉ちゃんも一緒なんですか? 帰ってきてるの?」
 嬉しそうに聞いてくるカサンドラにフランシスは言葉に詰まる。
「・・・いや。残念ながら一緒ではない。詳しいことは後で話す。今は時間がない」
 そう言ってここを出るように促すと、カサンドラも立ち上がった。しかし、少しの間フランシスをじっと見詰めていたが、やがて意を決したようにフランシスに問い掛ける。
「・・・お父さんは?」
 フランシスは一瞬躊躇ったが、誤魔化しても仕方がない。ここを出れば判ることだから。
「残念だが・・・」
 そういってフランシスは首を横に振った。カサンドラは一瞬泣き出しそうな顔になったが、それをグッと堪える。
「村は、他の人たちは?」
 その問いにもフランシスは無言で首を振る。カサンドラは長く深い溜息をついた。
「そうですか・・・ 私たちだけに、なってしまったんですね・・・」

 地上に出たカサンドラはあまりの惨状に声も無く立ち尽くした。父親と姉のローザと幸せに暮らしていた家は跡形も無く焼け落ち、美しかった街並みは見る影もない。
そして愛する父親の変わり果てた姿。いつも優しく頭を撫でてくれた暖かい手も、今は氷のように冷たくなっていた。その手を握って父親を見詰めるカサンドラは、しかし涙は流さなかった。
きつく唇を結び必死に堪えているような少女の姿を、フランシスはいたたまれない思いで見詰めていた。さすがにこの状況で姉のローザも亡くなっているとは言えなかった。フランシスのその手には子供の握り拳くらいはあろうかという特大の紅い輝晶石が握られている。ローザが持ち帰り、父親のエトヴァから守れと託されたものだろう。確かにこれほど大きな輝晶石など見たことがない。持っているだけでその魔力の大きさが感じられるほどだ。ガルディレアはこれを狙っていたに違いない。
 カサンドラを不憫に思うが、これ以上長居はしていられない。またいつガルディレアが戻ってくるとも限らないのだ。
「カサンドラ。すまないが、弔ってやる時間はない」
「・・・はい。わかっています」
 カサンドラは立ち上がると、焼け野原となった村を見回し、最後にもう一度父親を見下ろして短く黙祷した。そして決然とした顔をフランシスに向ける。
「フランシスさん」
「フランシスで良い。なんだ?」
「あ、えーと、フ、フランシス・・・ 私に・・・私に戦いを、戦い方を教えて下さい!」
「・・・習ってどうする?」
「お父さんと、村のみんなの仇を討ちます!」
「できるのか?」
「今はまだ力がありません・・・ でも強くなります! なってみせます! そして、フランシスやローザお姉ちゃんと一緒に戦えるようになります!」
「・・・そうか」
 まだ10歳とは思えない強い想いに、この子なら成し遂げるかもしれないとフランシスは思った。なんの目的もなく、ただ食い繋ぐために賞金稼ぎを続けてきた自分が急に恥かしく思えてきた。しかし、自分にもまだできることがある。ローザにこの子のことを頼まれたということを抜きにしても、この先の人生を、この子の想いを遂げさせるために使うのも悪くないかもしれない。そしてそれは必然的にローザの仇を討つという自分の目的にも繋がっている。フランシスはそう思うと晴れ晴れしい気持ちになった。
「・・・わたしと共にくるか? カサンドラ」
 フランシスの言葉に、カサンドラの顔がほころんだ。そして、勢いよく頷く。
「はい!」

 フランシスは、村外れにつないでおいた馬に跨ると、カサンドラに手を差し伸べた。その手を取って馬の背に上がろうしたところで、カサンドラは村の方を一瞬振り返ったが、唇の噛み締めて向き直るとフランシスの後ろに跨る。
「いくぞ」
「・・・はい」
 そういってカサンドラはフランシスの背中にしがみついた。もう振り返らないと心に決めた。
 二人を乗せた馬は森の中を駆ける。しばらく走ったところでフランシスは少し馬足を弱めた。そして自分の背中にしがみついて顔を伏せている少女に声を掛ける。
「カサンドラ」
「はい・・・」
 カサンドラは顔を伏せたまま小さく応える。
「カサンドラ。お前はまだ子供だ」
「はい・・・分かっています」
 フランシスは馬を走らせたまま、優しく言った。
「子供は、泣きたいときには泣いてもよいのだぞ」
 フランシスの言葉に、カサンドラの身体が震えると、しがみつく力が強くなった。そして抑えていた嗚咽は、次第に大きくなり、カサンドラはフランシスの背に縋って泣いた。
「うぇぇん。お父さん! おとうさん! どうして! どうしてぇ! あぁぁ!」

 グランドサーフェスの山に様々な想いが静かに吸い込まれていった。

ディラート

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真夜中の戦女神
(ギルドマスター:ラトウェル)

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